日本語の「利く」は、物の機能だけに使われる言葉ではありません。
- 気が利く
- 顔が利く
- 鼻が利く
- 目が利く
- 融通が利く
など、人の能力や性質を表すときにも使われます。
しかし、これらの「利く」を英語で表すときに、共通して使える一つの動詞があるわけではありません。
「気が利く」と「顔が利く」では、意味がまったく違うためです。
今回は、日本語の「利く」に含まれるさまざまな意味を、英語ではどのように表すのか見ていきます。
- 「気が利く」は一つの英単語では表しにくい
- thoughtful―思いやりがある
- considerate―周囲に配慮できる
- attentive―細かいところまで気づく
- 「よく気がつく人」はobservant
- 「彼は気が利かない」
- 「顔が利く」はconnections
- well-connected―人脈が広い
- 「この辺りでは顔が利く」
- 「鼻が利く」は二つの意味がある
- have a nose for―見つける才能がある
- 「目が利く」はhave a good eye for
- 「味の違いが分かる」はhave a good palate
- 「融通が利く」はflexible
- 「融通が利かない」はinflexible
- 「機転が利く」はquick-witted
- 日本語の「利く」と英語の表現
- まとめ
- シリーズを振り返って
- 英語で考える日本語の「きく」シリーズ
「気が利く」は一つの英単語では表しにくい
「気が利く人」とは、どのような人でしょうか。
- 相手が必要としていることに気づく
- 先回りして行動する
- 周囲に配慮できる
- 細かいところまでよく見ている
日本語の「気が利く」には、これらの意味が含まれています。
英語では、どの部分を強調するかによって表現を選びます。
thoughtful―思いやりがある
相手のことを考え、親切な行動をした人には、thoughtful が使えます。
That was very thoughtful of you.
気を利かせてくれてありがとうございます。
直訳すると、「それはあなたの思いやりのある行動でした」となります。
相手の気遣いや心配りに感謝するときによく使われる表現です。
例文
It was thoughtful of her to bring us some drinks.
飲み物を持ってきてくれるなんて、彼女は気が利いていました。He is kind and thoughtful.
彼は親切で、思いやりがあります。
thoughtful は、単に頭がよいという意味ではなく、相手の気持ちや必要なことを考えられる人を表します。
considerate―周囲に配慮できる
他人に迷惑をかけないように配慮する人には、considerate が使えます。
She is very considerate of others.
彼女は周囲の人によく気を配ります。Thank you for being so considerate.
いろいろと気を配ってくださり、ありがとうございます。
considerate は、相手の事情や感情を考えて行動することを表します。
thoughtfulとの違い
- thoughtful
親切な気遣いや心配り - considerate
相手の事情や立場への配慮
どちらも「気が利く」と訳せますが、少し視点が異なります。
attentive―細かいところまで気づく
店員やスタッフが客の様子をよく見て、必要なことにすぐ対応してくれる場合は、attentive が使えます。
The staff were friendly and attentive.
スタッフは親切で、よく気が利きました。Our waiter was very attentive.
担当の店員はとてもよく気が利きました。
attentive は、「注意を払っている」「よく気を配っている」という意味です。
接客や看護など、人の様子を注意深く見る場面でよく使われます。
「よく気がつく人」はobservant
周囲の小さな変化によく気づく人には、observant も使えます。
She is very observant.
彼女はとてもよく気がつく人です。You’re very observant.
よく気がつきましたね。
observant は、注意深く観察し、他の人が見落とすことにも気づけることを表します。
「気が利く」というより、「観察力がある」に近い表現です。
「彼は気が利かない」
「気が利かない」は、状況によって表現が変わります。
He isn’t very thoughtful.
彼はあまり気が利きません。He can be inconsiderate sometimes.
彼はときどき配慮に欠けることがあります。He doesn’t notice what other people need.
彼は他の人が何を必要としているか気づきません。
英語では、「気が利かない」に相当する一語を探すよりも、どのように気が利かないのかを具体的に表すほうが自然です。
「顔が利く」はconnections
日本語の「顔が利く」は、その地域や業界で人脈や影響力があることを表します。
英語では、connections を使って表現できます。
He has connections in the industry.
彼はその業界に顔が利きます。She has a lot of useful connections.
彼女には役に立つ人脈がたくさんあります。
ここでの connection は、電気や通信の接続ではなく、人とのつながりや人脈です。
well-connected―人脈が広い
人脈が広く、有力者とのつながりがある人は、well-connected と表せます。
He is well-connected in the business world.
彼は実業界に顔が利きます。She comes from a well-connected family.
彼女は人脈の広い家の出身です。
well-connected には、単に知り合いが多いだけでなく、
影響力のある人々とのつながりがある
という意味があります。
「この辺りでは顔が利く」
地域でよく知られている人については、次のように言えます。
He knows everyone around here.
彼はこの辺りでは顔が利きます。He is well known in the local community.
彼は地元でよく知られています。
日本語の「顔が利く」には、人脈だけでなく、知名度や信用が含まれることがあります。
そのため、文脈によっては well known のほうが自然です。
「鼻が利く」は二つの意味がある
「鼻が利く」には、文字どおり嗅覚が優れているという意味と、物事の気配を察知する能力があるという比喩的な意味があります。
嗅覚が優れている
Dogs have a keen sense of smell.
犬は鼻が利きます。She has an excellent sense of smell.
彼女は嗅覚がとても優れています。
a keen sense of smell は、「鋭い嗅覚」という意味です。
keen には、「鋭い」「敏感な」という意味があります。
have a nose for―見つける才能がある
日本語の「鼻が利く」を比喩的に表す場合、英語にもよく似た表現があります。
have a nose for something
これは、
何かを見つけたり、察知したりする才能がある
という意味です。
例文
She has a nose for business.
彼女は商売の勘が利きます。He has a nose for trouble.
彼は問題の気配を察知するのが得意です。She has a nose for a good story.
彼女はよい記事の題材を見つける勘があります。
日本語と英語の両方で「鼻」を使っているところが興味深い表現です。
「目が利く」はhave a good eye for
よい物を見分ける力があることを、日本語では「目が利く」と言います。
英語では、have a good eye for が使えます。
She has a good eye for art.
彼女は美術を見る目があります。He has a good eye for quality.
彼は品質を見る目が利きます。She has a good eye for design.
彼女はデザインを見る目があります。
より簡潔に、have an eye for と言うこともできます。
He has an eye for detail.
彼は細部を見る目があります。She has an eye for color.
彼女は色彩を見る目があります。
「味の違いが分かる」はhave a good palate
料理や飲み物の味を見分ける能力については、palate という単語も使われます。
He has a good palate.
彼は味を見分ける力があります。She has a refined palate.
彼女は洗練された味覚を持っています。
palate は本来「口蓋」という意味ですが、味覚や味の好みを表す言葉としても使われます。
日本語の「舌が利く」に近い表現です。
「融通が利く」はflexible
状況に応じて予定や方法を変えられることは、flexible で表せます。
My schedule is flexible.
私の予定は融通が利きます。They are flexible about working hours.
彼らは勤務時間について融通が利きます。We can be flexible with the date.
日程については融通を利かせられます。
flexible は、人、予定、規則、働き方など、幅広いものに使えます。
「融通が利かない」はinflexible
反対に、規則や考え方を状況に合わせて変えられない場合は、inflexible が使えます。
The rules are too inflexible.
その規則は融通が利かなさすぎます。He is inflexible about the schedule.
彼は日程について融通が利きません。
ただし、日常会話では、より具体的に言うこともできます。
The schedule can’t be changed.
その予定は変更できません。
「機転が利く」はquick-witted
「気が利く」と似た表現に、「機転が利く」があります。
機転が利くとは、突然の状況に対して素早く適切に判断できることです。
英語では、quick-witted が使えます。
She is quick-witted.
彼女は機転が利きます。His quick thinking saved the situation.
彼の機転によって、その場が救われました。
quick thinking は、「素早い判断」や「機転」を表します。
「気が利く」と「機転が利く」は似ていますが、英語では異なる表現になります。
日本語の「利く」と英語の表現
今回の表現を整理してみましょう。
| 日本語 | 英語の例 |
|---|---|
| 気が利く | thoughtful / considerate / attentive |
| よく気がつく | observant |
| 顔が利く | have connections / be well-connected |
| 鼻が利く | have a keen sense of smell |
| 商売に鼻が利く | have a nose for business |
| 目が利く | have a good eye for |
| 舌が利く | have a good palate |
| 融通が利く | be flexible |
| 機転が利く | be quick-witted |
日本語では、どれも「利く」という言葉で表せます。
しかし英語では、その人が持っている、
- 思いやり
- 配慮
- 観察力
- 人脈
- 嗅覚
- 審美眼
- 柔軟性
- 判断力
を具体的に表現します。
まとめ
「気が利く」「顔が利く」「鼻が利く」は、すべて日本語では「利く」を使います。
しかし、その意味はそれぞれ異なります。
She is very thoughtful.
彼女はとても気が利きます。He is well-connected in the industry.
彼はその業界に顔が利きます。Dogs have a keen sense of smell.
犬は鼻が利きます。She has a nose for business.
彼女は商売の勘が利きます。He has a good eye for quality.
彼は品質を見る目が利きます。
日本語の一つの言葉に対応する英単語を探すのではなく、
その場面では、どのような能力が働いているのか
を考えることが、自然な英語表現につながります。
シリーズを振り返って
今回のシリーズでは、日本語の「効く」と「利く」を英語でどのように表すか考えてきました。
- 薬が効く
→ work、kick in、take effect - ブレーキが利く
→ work、responsive、stopping power - 気が利く
→ thoughtful、considerate、attentive - 顔が利く
→ have connections、well-connected - 鼻が利く
→ have a keen sense of smell、have a nose for
日本語の「きく」は、とても便利で表現の幅が広い言葉です。
英語では、その意味を細かく分けて表現します。
日本語と英語の違いを比べることで、単語だけでなく、それぞれの言葉が物事をどのように捉えているかも見えてきます。
英語で考える日本語の「きく」シリーズ
- 日本語の「きく」―「効く」と「利く」はどう違う?
- 薬が「効く」は work?― kick in、take effectとの違い
- ブレーキが「利く」― work、responsive、stopping power
- 「気が利く」「顔が利く」「鼻が利く」を英語で言うと?