日本語の「あいまいな」は、さまざまな場面で使われます。
- あいまいな記憶
- あいまいな返事
- あいまいな表現
- あいまいな理由
- 意味があいまいな文章
英語では、これらをいつも同じ単語で表せるわけではありません。
代表的な単語として、次の3語があります。
- vague
- ambiguous
- obscure
辞書では、どれも「不明確な」「あいまいな」などと訳されることがあります。
しかし、何が原因であいまいになっているのかは、それぞれ異なります。
vague・ambiguous・obscureの違い
| 単語 | 何が問題なのか | 日本語のイメージ |
|---|---|---|
| vague | 情報や具体性が足りない | 漠然とした、ぼんやりした |
| ambiguous | 二つ以上の解釈ができる | どちらとも取れる、多義的な |
| obscure | 意味や背景が見えにくい | 難解な、判然としない |
まずは、次のように覚えると分かりやすいでしょう。
- vague:輪郭がぼんやりしている
- ambiguous:意味が二つ以上に分かれる
- obscure:何かに隠れて意味が見えにくい
この記事では、英国英語を収録したBritish National Corpus(BNC)を手がかりに、3語がどのような名詞や表現と結びつくのかを見ながら、使い分けを考えます。
British National Corpusとは
British National Corpus、略してBNCは、20世紀後半の英国英語を幅広く収録したコーパスです。
新聞、雑誌、一般書、学術書、フィクション、手紙、会話など、さまざまな種類の英語が集められています。
一般にBNCと呼ばれるBNC1994は、約1億語で構成されています。大部分は書き言葉ですが、日常会話などの話し言葉も含まれています。
コーパスを使うと、辞書に書かれた意味だけでなく、次のことも調べられます。
その単語が、実際にどのような語と一緒に使われているか
単語同士の自然な結びつきを確認できます。
ポイント
このような、自然に結びつきやすい語の組み合わせをコロケーションといいます。
たとえば、日本語では次のように言います。
- 濃いお茶
- 強い風
- 深い眠り
一方、通常は「濃い風」や「重い眠り」とは言いません。
英語でも、意味が似ている単語だからといって、いつも同じ名詞と組み合わせられるわけではありません。
この記事では、BNC、BNCを利用したコロケーション検索サービス、英英辞典などを参考にしながら、学習上重要な代表的な組み合わせを取り上げます。
1.vague
情報や輪郭が足りず、ぼんやりしている
vagueの中心にあるのは、次のような感覚です。
大まかなことは分かるものの、細部や輪郭がはっきりしない
必要な情報や具体性が不足している状態です。
ポイント
意味が二つあるとは限りません。内容がぼんやりしていることが問題です。
vagueと結びつきやすい語
| 表現 | 日本語のイメージ |
|---|---|
| a vague idea | 漠然とした考え |
| a vague notion | ぼんやりした概念 |
| a vague impression | 漠然とした印象 |
| a vague sense | かすかな感覚 |
| a vague feeling | 漠然とした気持ち |
| a vague memory | ぼんやりした記憶 |
| a vague answer | 具体性のない返事 |
| vague instructions | 具体性に欠ける指示 |
考え、感覚、記憶、返事など、内容や輪郭がはっきりしないものによく使われます。
a vague memory:ぼんやりした記憶
I have only a vague memory of that day.
その日のことは、ぼんやりとしか覚えていません。
ポイント
何かを覚えてはいますが、場所、時間、出来事の順序などを明確には思い出せません。
記憶に二つの解釈があるのではなく、細かな部分が失われ、輪郭だけが残っている状態です。
a vague answer:具体性のない返事
He gave me a vague answer.
彼は私に、はっきりしない返事をしました。
ポイント
必要な日時、方法、担当者などが示されず、返事の内容に具体性がありません。
We’ll deal with it sometime soon.
近いうちに対応します。
ポイント
「近いうち」がいつなのか分からないため、具体性に欠ける返事です。
vague instructions:具体性に欠ける指示
The instructions were too vague to follow.
その指示はあいまいすぎて、従うことができませんでした。
ポイント
何を、どの順番で、どこまで行えばよいのかが、具体的に示されていません。
be vague about:詳しく話さない
be vague about+話題で、「そのことについて詳しく話さない」と表せます。
She was rather vague about her future plans.
彼女は将来の計画について、あまりはっきり話しませんでした。
ポイント
考えが固まっていない場合にも、詳しいことを話したくない場合にも使われます。
vagueの中心イメージ
vagueは、霧がかかった景色のような言葉です。
そこに何かがあることは分かりますが、細部や輪郭まではよく見えません。
vague = 具体性や輪郭が足りない
ぼんやりしていて、必要な情報が不足しています。
覚え方
霧の中に何かが見えるものの、形までは分からない状態をイメージします。
2.ambiguous
二つ以上の解釈ができる
ambiguousの中心にあるのは、次のような感覚です。
一つの言葉や状況について、二つ以上の解釈が成立する
意味を一つに決められない状態です。
ポイント
単に情報が少ないのではなく、複数の意味や見方が成立します。
ambiguousと結びつきやすい語
| 表現 | 日本語のイメージ |
|---|---|
| an ambiguous word | 複数の意味に取れる単語 |
| an ambiguous phrase | 解釈が分かれる句 |
| an ambiguous statement | どちらとも取れる発言 |
| ambiguous wording | 複数の解釈ができる表現 |
| an ambiguous answer | 賛成とも反対とも取れる返事 |
| an ambiguous relationship | はっきり分類できない関係 |
| an ambiguous ending | 解釈を一つに決めない結末 |
特に、言葉、文章、発言、規則などの解釈が問題になる場面でよく使われます。
an ambiguous statement:どちらとも取れる発言
His statement was deliberately ambiguous.
彼は、どちらとも取れるように意図的に発言をぼかしました。
ポイント
賛成とも反対とも受け取れるなど、意図的に複数の解釈を残しています。
ambiguous wording:複数の解釈ができる表現
The wording of the sentence is ambiguous.
その文の表現は、複数の解釈ができます。
ポイント
文の意味を一つに決められないことが問題です。
たとえば、次の英文を見てみましょう。
I saw the man with a telescope.
私は望遠鏡に関係する男性を見ました。
ポイント
この文は、少なくとも二通りに解釈できます。
- 私が望遠鏡を使って、その男性を見た
- 私が、望遠鏡を持っている男性を見た
with a telescopeが、動詞のsawを説明しているのか、名詞のthe manを説明しているのかが、一つに決まりません。
このように、文の構造によって複数の意味が生まれる場合にambiguousを使います。
an ambiguous answer:賛成とも反対とも取れる返事
Her answer was ambiguous.
彼女の返事は、どちらとも取れるものでした。
ポイント
承諾なのか拒否なのか、返事の意味を一つに決められません。
That might be nice.
それもよいかもしれませんね。
ポイント
行きたいと言っているようにも、遠回しに断っているようにも聞こえる可能性があります。
an ambiguous relationship:はっきり分類できない関係
Their relationship remains ambiguous.
二人の関係は、今もはっきり定義できません。
ポイント
友人、恋人、仕事上の関係など、複数の見方が成立する状態です。
ambiguousの中心イメージ
ambiguousには、意味の分かれ道があります。
一つの道がぼんやりしているのではなく、二つ以上の道があり、どちらを選ぶべきか決められない状態です。
ambiguous = 解釈が複数ある
意味を一つに決められません。
覚え方
道が二手以上に分かれ、どちらへ進むべきか決められない状態をイメージします。
3.obscure
意味や事情が隠れていて、理解しにくい
obscureの中心には、次のような感覚があります。
何かに覆われていて、見えにくい
意味、理由、背景などが表に出ておらず、理解しにくい状態です。
ポイント
「難解な」という意味だけでなく、「一般にはあまり知られていない」という意味もあります。
obscureの主な二つの意味
- 意味、理由、事情などが分かりにくい
- 人や物が一般にはあまり知られていない
obscureと結びつきやすい語
| 表現 | 日本語のイメージ |
|---|---|
| an obscure reference | 背景が分からず理解しにくい言及 |
| an obscure passage | 難解な一節 |
| an obscure meaning | 分かりにくい意味 |
| an obscure reason | よく分からない理由 |
| obscure origins | 明らかでない起源 |
| an obscure writer | ほとんど知られていない作家 |
| remain obscure | 依然として不明である |
an obscure reference:背景が分からない言及
The book contains several obscure references.
その本には、分かりにくい言及がいくつか含まれています。
ポイント
古い神話、専門的な理論、あまり知られていない文学作品など、理解に必要な背景知識が不足しています。
意味が二つあるのではなく、何を指しているのか理解するための情報が見えない状態です。
remain obscure:今も理由が分からない
The reason for his sudden departure remains obscure.
彼が突然立ち去った理由は、今もはっきり分かっていません。
ポイント
詳細が不足しているだけでなく、調べても本当の理由が見えてこない状態です。
obscure origins:明らかでない起源
The origins of the custom are obscure.
その習慣の起源は、よく分かっていません。
ポイント
記録がない、歴史が古い、複数の説があるなどの理由で、起源が見えにくくなっています。
an obscure writer:ほとんど知られていない作家
He is writing a book about an obscure Victorian poet.
彼は、ほとんど知られていないヴィクトリア朝の詩人について本を書いています。
ポイント
ここでのobscureは「あいまいな」ではなく、「無名の」「世間にあまり知られていない」という意味です。
obscureの中心イメージ
obscureは、何かが手前を覆っていて、奥にあるものが見えない状態です。
意味や背景が難解な場合にも、人や作品が世間の目に触れていない場合にも、この「見えにくさ」が共通しています。
obscure = 何かに隠されて見えにくい
意味、理由、背景、存在などが表から見えません。
覚え方
物の陰に隠れ、奥に何があるのか分からない状態をイメージします。
同じ「あいまいな返事」でも意味が違う
vagueとambiguousは、どちらもanswerと組み合わせられます。
しかし、返事の何が問題なのかは異なります。
| 表現 | 問題になっていること | 具体例 |
|---|---|---|
| a vague answer | 具体的な情報が足りない | 日時や方法を明言しない |
| an ambiguous answer | 複数の意味に取れる | 承諾とも拒否とも取れる |
He gave a vague answer.
彼は具体性のない返事をしました。
ポイント
返事の情報が不足しています。
He gave an ambiguous answer.
彼はどちらとも取れる返事をしました。
ポイント
返事を二通り以上に解釈できます。
「説明があいまいだ」を3語で比べる
His explanation was vague.
彼の説明は具体性に欠けていました。
ポイント
大まかなことは分かりますが、必要な詳細が足りません。
His explanation was ambiguous.
彼の説明は複数の意味に解釈できました。
ポイント
Aという意味にもBという意味にも取れます。
His explanation was obscure.
彼の説明は難解で、意味がつかみにくいものでした。
ポイント
専門用語や背景知識が必要で、説明を理解すること自体が困難です。
| 表現 | 問題になっていること |
|---|---|
| a vague explanation | 詳細や具体性が足りない |
| an ambiguous explanation | 二つ以上の解釈ができる |
| an obscure explanation | 難解で意味がつかみにくい |
どの単語を選べばよいか
「あいまいな」を英語にするときは、次の順番で考えてみましょう。
詳細や具体性が足りないか
その場合はvagueが適しています。
- a vague memory
- a vague idea
- a vague answer
二つ以上の意味に取れるか
その場合はambiguousが適しています。
- an ambiguous statement
- ambiguous wording
- an ambiguous ending
意味や背景が見えにくいか
その場合はobscureが適しています。
- an obscure reference
- obscure origins
- the reason remains obscure
ミニクイズ:正しい「あいまいな」を選ぼう
次の英文の空欄には、vague・ambiguous・obscureのどれが入るでしょうか。
英文の直下には和訳が表示されています。空欄にマウスを重ねると、答えとポイントが表示されます。スマートフォンでは空欄をタップしてください。
I have only a recollection of the conversation.
和訳
その会話については、ぼんやりとした記憶しかありません。
ポイント
記憶の細部や輪郭がはっきりしないため、vagueを使います。
The sentence is because it can be understood in two different ways.
和訳
その文は二通りに解釈できるため、意味があいまいです。
ポイント
二つの解釈が成立するため、ambiguousが入ります。
The origins of the ceremony remain .
和訳
その儀式の起源は、今もよく分かっていません。
ポイント
起源や歴史的背景が見えないため、obscureを使います。
The manager was about when the changes would begin.
和訳
管理者は、変更がいつ始まるのかを明確に話しませんでした。
ポイント
開始時期について具体的な情報を示していないため、vagueが自然です。
The novel ends on an note.
和訳
その小説は、複数の解釈ができる形で終わります。
ポイント
結末を一つの意味に決められないため、ambiguousを使います。
The book contains several references.
和訳
その本には、背景が分かりにくい言及がいくつか含まれています。
ポイント
理解に必要な背景知識が見えないため、obscureが入ります。
まとめ
日本語の「あいまいな」を英語にするときは、何が原因であいまいになっているのかに注目することが大切です。
- vague:情報や輪郭が足りない
- ambiguous:二つ以上の解釈ができる
- obscure:意味や背景が見えにくい
覚え方を一言でまとめると、次のようになります。
| 単語 | 覚え方 |
|---|---|
| vague | 輪郭不足 |
| ambiguous | 複数解釈 |
| obscure | 見えにくさ |
「あいまいだからvague」と機械的に置き換えるのではなく、次の三つを考えてみましょう。
- 詳細や具体性が足りないのか
- 二つ以上の意味に取れるのか
- 意味や背景が見えず、理解しにくいのか
あいまいになっている理由を見分けると、適切な英単語を選びやすくなります。
コーパスについての注記
この記事では、英国英語を幅広く収録したBNC1994を中心的な参照資料としています。
BNC1994は20世紀後半の英国英語を収録しているため、基本的な語法やコロケーションを調べるうえで役立ちます。
一方、現在の会話表現、新しいデジタル用語、SNSで使われる表現などを調べる場合は、BNC2014や、ほかの新しいコーパスも併せて確認する必要があります。
また、コーパスの検索結果は、次のような条件によって変わります。
- 検索する品詞
- 単語の左右何語を調べるか
- 書き言葉と話し言葉の区別
- 頻度を測る方法
- 使用する統計指標
そのため、この記事では細かな頻度順位を示すのではなく、学習上重要なコロケーションと、用法の大まかな傾向を取り上げています。