Learn English Little by Little

英語の使い分け

日本語の「きく」―「効く」と「利く」の違いと英語表現

英語で考える日本語の「きく」シリーズ 第1回

日本語には、同じ読み方でも、漢字によって意味が変わる言葉があります。

今回取り上げるのは、次のような表現に使われる「きく」です。

  • 薬が効く
  • 冷房が効く
  • ブレーキが利く
  • 気が利く
  • 鼻が利く

日本語では、「効果が現れる」のか、「能力や機能が働く」のかによって、一般に効くと利くを使い分けます。

ところが英語では、この2つに対応する決まった動詞が一つずつあるわけではありません。

薬にもブレーキにもworkを使える一方で、わさび、嗅覚、気配りなどは、それぞれ別の表現で表します。

この記事では、日本語の「効く」と「利く」の違いを確認したうえで、場面に応じた英語表現を見ていきます。

「効く」と「利く」の基本的な違い

漢字 中心となる意味 代表的な例
効く 効果や作用が現れる 薬が効く、冷房が効く、作戦が効く
利く 能力や機能が十分に働く ブレーキが利く、鼻が利く、気が利く

まずは、次のように覚えると分かりやすいでしょう。

  • 期待した効果が現れるなら「効く」
  • 備わっている能力や機能が働くなら「利く」

ただし、実際の文章では表記が揺れることもあります。迷ったときには、ひらがなで「きく」と書く方法もあります。

「効く」:効果や作用が現れる

「効く」は、薬、方法、働きかけなどによって、期待した効果や作用が現れる場合に使います。

  • 薬が効く
  • 麻酔が効く
  • 冷房が効く
  • 忠告が効く
  • 作戦が効く
  • わさびが効く

薬によって痛みが和らいだり、冷房によって部屋が涼しくなったりするのは、何らかの効果が現れたからです。

効果が現れるなら「効く」

薬、方法、働きかけなどが、期待した結果をもたらす場合に使います。

ポイント
「何かが働きかけ、その結果として変化が起きる」と考えると分かりやすくなります。

「利く」:能力や機能が働く

「利く」は、人や物がもともと持っている能力や機能が、十分に働く場合に使います。

  • ブレーキが利く
  • 鼻が利く
  • 目が利く
  • 気が利く
  • 顔が利く
  • 融通が利く
  • 左手が利く

「ブレーキが利く」は、ブレーキが本来の制動機能を発揮しているということです。

「鼻が利く」は、においを嗅ぎ分ける能力が優れていることを表します。

能力や機能が働くなら「利く」

人や物に備わった力が、十分に発揮される場合に使います。

ポイント
装置の機能、感覚の鋭さ、気配りや人脈など、幅広い「働く力」を表します。

英語では「効く」と「利く」を区別するの?

日本語では漢字を使い分けますが、英語に「効く専用の動詞」と「利く専用の動詞」があるわけではありません。

たとえば、薬とブレーキの両方にworkを使えます。

The medicine works.

その薬は効きます。

ポイント
薬が期待どおりの効果をもたらすことを表しています。

The brakes work well.

そのブレーキはよく利きます。

ポイント
ブレーキが正常に機能し、車をきちんと止められることを表しています。

この2文では、どちらにもworkが使われています。

英文 workの意味 日本語
The medicine works. 期待した効果をもたらす 薬が効く
The brakes work. 装置が正常に機能する ブレーキが利く

workには、単に「働く」だけでなく、次のような幅広い意味があります。

  • 正常に機能する
  • 期待した結果を出す
  • 方法や作戦が成功する

薬が「効く」

薬が効く場合、もっとも基本的で日常的な表現はworkです。

This medicine really works.

この薬は本当によく効きます。

ポイント
薬に期待される効果が実際に現れることを表します。

The pain medicine didn’t work.

その痛み止めは効きませんでした。

ポイント
期待していた鎮痛効果が得られなかったという意味です。

薬が効き始める過程を表すkick inや、少し改まったtake effectについては、シリーズ第2回で詳しく紹介します。

ブレーキが「利く」

ブレーキなどの装置が正常に機能する場合にも、workを使えます。

The brakes are working properly.

ブレーキは正常に利いています。

ポイント
properlyを加えると、装置が正常に機能していることを明確に表せます。

The brakes don’t work well.

ブレーキの利きがよくありません。

ポイント
ブレーキがまったく動かない場合だけでなく、十分な制動力がない場合にも使えます。

冷房が「効く」

エアコンなどの機械が正常に動いていることを言うなら、workを使えます。

The air conditioner is working well.

エアコンはよく効いています。

ポイント
エアコンという機械が正常に働き、冷房機能を発揮していることを表します。

一方、「冷房が効いていて、部屋が涼しい」という結果を伝えたい場合は、部屋の状態をそのまま表す方が自然なこともあります。

It’s nice and cool in here.

ここは涼しくて気持ちがいいですね。

ポイント
機械の働きではなく、冷房によって生じた快適な状態に注目しています。

作戦や忠告が「効く」

workは、機械や薬だけでなく、方法、作戦、忠告などが期待した結果を出した場合にも使えます。

The plan worked.

その作戦は効きました。/その計画はうまくいきました。

ポイント
計画が狙いどおりの結果をもたらしたことを表します。

My advice worked.

私の忠告が効きました。

ポイント
忠告によって、相手の行動や状況に期待した変化が生じました。

わさびが「効いている」

「わさびが効いている」は、わさびの味や刺激が料理の中ではっきり感じられるという意味です。

この場合は、通常workをそのまま使うのではなく、味や刺激を具体的に表します。

This has a strong wasabi flavor.

これはわさびの風味が強いです。

ポイント
わさびの味がはっきり感じられることを、直接表現しています。

The wasabi gives it a nice kick.

わさびが、よい刺激を加えています。

ポイント
ここでのkickは、「ピリッとした刺激」「パンチ」という意味です。

鼻が「利く」

「鼻が利く」は、においを感じ取ったり、嗅ぎ分けたりする能力が優れていることを表します。

この場合は、workではなく、嗅覚の鋭さを具体的に表します。

She has a keen sense of smell.

彼女は鼻が利きます。

ポイント
a keen sense of smellは、「鋭い嗅覚」という意味です。

Dogs have an excellent sense of smell.

犬は非常に鼻が利きます。

ポイント
sense of smellで「嗅覚」を表します。

英語では場面全体を考える

日本語の「効く」と「利く」は、英語で一つの単語に置き換えられるとは限りません。

日本語 英語の例 英語で注目する点
薬が効く The medicine works. 薬が効果を出す
ブレーキが利く The brakes work well. 装置が正常に機能する
冷房が効く The air conditioner is working well. 機械が冷房機能を発揮する
わさびが効く The wasabi gives it a nice kick. 味や刺激が感じられる
忠告が効く My advice worked. 忠告が期待した結果を出す
鼻が利く have a keen sense of smell 嗅覚が鋭い

大切なのは、日本語の「きく」を機械的に置き換えるのではなく、次の点を考えることです。

  • 何が働いているのか
  • どのような効果や結果が生じているのか
  • 機械の機能なのか、人の能力なのか
  • 味や刺激を表しているのか

ミニクイズ:場面に合う英語を選ぼう

次の英文の空欄に入る表現を考えてみましょう。

work / cool / give it a nice kick / have a keen sense of smellなど、文に合う形を選んでください。

英文の直下には和訳が表示されています。空欄にマウスを重ねると、答えとポイントが表示されます。スマートフォンでは空欄をタップしてください。

This medicine really .

和訳
この薬は本当によく効きます。

ポイント
薬が期待した効果を出す場合は、日常的にworkを使えます。

The brakes .

和訳
そのブレーキはよく利きます。

ポイント
ブレーキという装置が正常に機能する場合にも、workを使います。

It’s nice and in here.

和訳
ここは涼しくて気持ちがいいですね。

ポイント
冷房機器そのものではなく、涼しくなった部屋の状態を表しています。

The wasabi .

和訳
わさびが、よい刺激を加えています。

ポイント
味の「効き」は、刺激や風味を具体的に表す方が自然です。

She .

和訳
彼女は鼻が利きます。

ポイント
嗅覚という能力の鋭さを表すため、a keen sense of smellを使います。

Our plan .

和訳
私たちの作戦は効きました。

ポイント
作戦が期待した結果を出した場合にも、workを使えます。

まとめ

日本語の「効く」と「利く」は、次のように整理できます。

  • 効く:効果や作用が現れる
  • 利く:能力や機能が十分に働く

英語では、薬にもブレーキにもworkが使われることがあります。

  • The medicine works.:薬が効く
  • The brakes work.:ブレーキが利く

ただし、すべての「きく」をworkで表せるわけではありません。

味の刺激ならgive it a nice kick、嗅覚の鋭さならhave a keen sense of smellなど、場面に合った表現を選びます。

日本語の単語をそのまま英語へ置き換えるのではなく、「何が働き、どのような結果が生じているのか」を考えることが大切です。

英語で考える日本語の「きく」シリーズ

  1. 日本語の「きく」―「効く」と「利く」の違いと英語表現
  2. 薬が「効く」はwork? ― kick in・take effect との違い
  3. ブレーキが「利く」― work・responsive・stopping power の違い
  4. 「気が利く」「顔が利く」「鼻が利く」を英語で言うと?

関連記事

PAGE TOP
目次