日本語には、同じ読み方でも漢字によって意味が変わる言葉があります。
今回取り上げるのは、
- 薬が効く
- ブレーキが利く
- 気が利く
- 鼻が利く
などに使われる「きく」です。
前回のシリーズでは、英語の hear や listen を通して、「聞く」の違いを考えました。
今回は、「効く」と「利く」の違いを入り口にして、英語ではどのように表現するのかを見ていきます。
「効く」は効果が現れること
「効く」は、働きかけたものの効果や作用が現れるときに使います。
たとえば、次のような表現です。
- 薬が効く
- 麻酔が効く
- 冷房が効く
- 忠告が効く
- 作戦が効く
- わさびが効く
薬を飲んで痛みが和らいだり、冷房によって部屋が涼しくなったりするのは、何らかの効果が現れたからです。
覚え方としては、
効果が現れるなら「効く」
と考えると分かりやすいでしょう。
「利く」は能力や機能が働くこと
一方の「利く」は、その人や物が持っている能力や機能が十分に働くときに使います。
- ブレーキが利く
- 鼻が利く
- 目が利く
- 気が利く
- 顔が利く
- 融通が利く
- 左手が利く
ブレーキが利くというのは、ブレーキが本来の機能を発揮しているということです。
鼻が利くという場合は、においを嗅ぎ分ける能力が優れていることを表します。
こちらは、
能力や機能が働くなら「利く」
と整理できます。
「効く」と「利く」の違い
簡単にまとめると、次のようになります。
| 漢字 | 基本的な意味 | 例 |
|---|---|---|
| 効く | 効果や作用が現れる | 薬が効く、冷房が効く |
| 利く | 能力や機能が働く | ブレーキが利く、鼻が利く |
ただし、実際の文章では表記が揺れることもあります。
たとえば、「ブレーキがきく」を「ブレーキが効く」と書く例も見かけます。
しかし、ブレーキという装置の機能が働くという意味では、基本的には、
ブレーキが利く
と考えるとよいでしょう。
英語では「効く」と「利く」を区別するの?
ここからが英語学習として面白いところです。
日本語では漢字を使い分けますが、英語では「効く」と「利く」に対応する二つの決まった動詞があるわけではありません。
たとえば、次の二つを見てみましょう。
The medicine works.
その薬は効きます。The brakes work well.
そのブレーキはよく利きます。
薬にもブレーキにも、英語では work が使えます。
しかし、意味は少し異なります。
- The medicine works.
→ 薬に期待した効果がある - The brakes work.
→ ブレーキが正常に機能する
つまり、英語の work は「働く」だけでなく、
期待どおりの結果を出す
という幅広い意味を持っています。
冷房が効く場合も work が使える
冷房が効いている場合にも、work が使えます。
The air conditioner is working well.
エアコンはよく効いています。
ただし、日本語の「冷房が効いている」は、部屋が涼しいという結果を伝えていることもあります。
そのような場面では、次のように言うこともできます。
It’s nice and cool in here.
ここは涼しくて気持ちがいいですね。
英語では、日本語の単語をそのまま置き換えるのではなく、
何が働いているのか
どのような結果になっているのか
を考えることが大切です。
「わさびが効いている」はどう考える?
食べ物について、
この料理は、わさびが効いている。
と言うことがあります。
ここでの「効く」は、わさびの味や刺激が料理の中ではっきり感じられるという意味です。
英語では、次のように表せます。
This has a strong wasabi flavor.
これはわさびの風味が強いです。
また、わさびがよい刺激やアクセントを加えている場合には、
The wasabi gives it a nice kick.
わさびがよい刺激を加えています。
と言うこともできます。
英語の kick には、薬の効果とは別に、「ピリッとした刺激」や「パンチ」という意味があります。
英語では場面ごとに表現を選ぶ
日本語では、さまざまな場面で「きく」という一つの音を使えます。
しかし英語では、意味に応じて表現を選びます。
| 日本語 | 英語の例 |
|---|---|
| 薬が効く | The medicine works. |
| ブレーキが利く | The brakes work well. |
| 冷房が効く | The air conditioner is working well. |
| わさびが効く | The wasabi gives it a nice kick. |
| 忠告が効く | My advice worked. |
| 鼻が利く | have a keen sense of smell |
この違いを意識すると、単語を一対一で置き換えるのではなく、場面全体を英語で考えられるようになります。
まとめ
今回は、日本語の「効く」と「利く」の違いを見てきました。
- 効く
効果や作用が現れる - 利く
能力や機能が十分に働く
英語では、どちらにも work が使われることがあります。
しかし、すべての「きく」を work で表せるわけではありません。
薬、機械、味覚、人の能力など、何について話しているかによって表現が変わります。
次回は、薬が「効く」と言うときに使われる、
- work
- kick in
- take effect
の違いを詳しく見ていきます。
英語で考える日本語の「きく」シリーズ
- 日本語の「きく」―「効く」と「利く」はどう違う?
- 薬が「効く」は work?― kick in、take effectとの違い
- ブレーキが「利く」― work、responsive、stopping power
- 「気が利く」「顔が利く」「鼻が利く」を英語で言うと?