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英語の使い分け

kill・murder・slaughter の違い ―「殺す」の英語表現を使い分けよう

日本語の「殺す」を英語にするとき、まず思い浮かぶのは kill ではないでしょうか。

しかし英語には、murder や slaughter もあり、日本語ではどれも「殺す」と訳されることがあります。

この3語は、単に「強さの違い」で使い分けるわけではありません。

kill は、人・動物・植物などを「死なせる」という最も広い語です。

murder は、人を意図的かつ不法に殺すことを表し、「犯罪としての殺人」という意味が中心です。

slaughter は、動物を食肉などの目的で屠殺する場合や、多数の人・動物が残酷に殺される場合に使われます。

つまり、英語では「誰が死んだのか」「意図的だったのか」「犯罪なのか」「大量・残酷な殺害なのか」といった点によって、使う語が変わります。

この記事では、kill・murder・slaughter の中心イメージと、現代英語での自然な使い分けを詳しく見ていきましょう。

kill・murder・slaughter の違いをざっくり確認

単語 中心イメージ 主な対象・場面 重要なポイント
kill 死なせる 人、動物、植物など 意図的・偶発的のどちらにも使える最も広い語
murder 人を犯罪として殺害する 主に人 意図的・不法な殺人という意味を含む
slaughter 屠殺する・大量に残酷に殺す 家畜、人々など 動物の食肉処理、または多数の残酷な殺害

まず大切なのは、kill が3語の中で最も意味の広い基本語だということです。

murder や slaughter と呼べる状況の多くは、広い意味では kill と表現できます。しかし、kill と言えるからといって、必ず murder や slaughter と言えるわけではありません。

kill ― 最も広い「死なせる」

kill の中心イメージは、単純に「生きているものを死なせる」ことです。

重要なのは、kill 自体には必ずしも「犯罪」「悪意」「意図的」という意味が含まれていないことです。

事故、病気、災害などが人を死なせた場合にも kill を使えます。

人を死なせる

The crash killed two people.

訳:その事故で2人が死亡しました。

交通事故によって人が死亡したという事実を述べています。事故なので、ここで murder は使えません。ニュースでも kill はこのようによく使われます。

The fire killed three people.

訳:その火事で3人が亡くなりました。

火事そのものが死因となったため kill が使われています。人間が意図的に殺したという意味ではありません。

病気などが人を死なせる

The disease kills thousands of people every year.

訳:その病気によって毎年何千人もの人が亡くなっています。

disease、virus、cancer などを主語にして kill を使うこともできます。「病気が人を殺す」というより、日本語では自然に「病気で亡くなる」と訳すことが多いでしょう。

動物や植物にも使える

The pesticide can kill insects.

訳:その農薬は昆虫を死なせることがあります。

kill は人だけでなく動物にも使えます。

Too much water can kill the plant.

訳:水をやりすぎると、その植物を枯らしてしまうことがあります。

植物についても kill が使えます。日本語では「植物を殺す」より「枯らす」と訳す方が自然な場合があります。

意図的に殺す場合にも使える

kill は偶発的な死亡だけでなく、もちろん意図的に殺した場合にも使えます。

He threatened to kill me.

訳:彼は私を殺すと脅しました。

threaten to kill someone は「人を殺すと脅す」という自然な組み合わせです。ここでは意図的な行為ですが、犯罪としての分類に焦点を当てているわけではないので kill が使えます。

kill oneself は「自殺する」

The character tries to kill himself.

訳:その登場人物は自殺しようとします。

kill oneself は文字どおり「自分自身を死なせる」で、「自殺する」という意味になります。現代英語では、文脈によっては die by suicide など別の表現が選ばれることもあります。

kill は比喩表現も非常に多い

kill は「生命を奪う」という意味から発展して、物事を止める・消す・台無しにするといった意味でも使われます。

Let’s kill some time before the movie starts.

訳:映画が始まるまで時間をつぶそう。

kill time は「時間をつぶす」という非常によく使われる表現です。時間を「消費してなくす」というイメージです。

Could you kill the lights?

訳:電気を消してくれる?

口語では kill the lights で「照明を消す」という意味になります。「機能を止める」という kill の比喩的用法です。

The high price could kill the project.

訳:その高価格がプロジェクトを頓挫させるかもしれません。

人や動物ではなく、計画や企画を「終わらせる・潰す」という意味でも kill が使えます。

kill off ― 次々と死なせる・消滅させる

The disease killed off much of the local wildlife.

訳:その病気によって、その地域の野生動物の多くが死にました。

kill off は、多数の生物などを死なせて数を大きく減らす、あるいは絶滅させるような場面で使われます。

murder ― 「犯罪として人を殺害する」

murder は、単に「人を死なせる」という意味ではありません。

中心にあるのは、人を意図的かつ不法に殺害するという「犯罪としての殺人」です。

法律上の厳密な定義は国や地域によって異なりますが、日常英語でも murder には強い犯罪性が含まれています。

事故死を murder とは言わない

ここは kill との最も重要な違いです。

The driver killed a pedestrian in the accident.

訳:その運転手は事故で歩行者を死亡させました。

kill は結果として人を死なせたことを表します。この文だけでは、故意だったとは限りません。

The man murdered his neighbor.

訳:その男は隣人を殺害しました。

murder を使うと、単なる死亡ではなく「意図的な犯罪として殺害した」という意味になります。

したがって、murder は kill より強い表現だから使うのではありません。

そもそも意味の軸が違います。

kill は死亡という結果に注目し、murder は犯罪としての殺人に注目しています。

murder は基本的に人について使う

通常、murder の対象は人間です。

Police believe she was murdered.

訳:警察は、彼女が殺害されたとみています。

事件報道で非常によく見られる用法です。単に亡くなったのではなく、何者かによって犯罪として殺害されたという意味になります。

名詞でも murder

Police are investigating the murder.

訳:警察はその殺人事件を捜査しています。

murder は動詞だけでなく、「殺人」という名詞としても非常によく使われます。

ニュースでは次のような組み合わせを頻繁に見かけます。

表現 意味
murder victim 殺人事件の被害者
murder case 殺人事件
murder investigation 殺人事件の捜査
murder suspect 殺人事件の容疑者
murder weapon 殺人に使われた凶器
attempted murder 殺人未遂

murderer ― 殺人犯

The murderer was arrested two days later.

訳:その殺人犯は2日後に逮捕されました。

murder の派生語 murderer は「殺人者・殺人犯」です。

get away with murder ― 好き放題しても許される

murder には、実際の殺人とは関係のない慣用表現もあります。

He gets away with murder at work.

訳:彼は職場で何をしても許されているようなものです。

get away with murder は直訳すると「殺人をしても罰を逃れる」ですが、実際には「ひどいことをしても罰せられない」「好き放題しても許される」という比喩表現です。

slaughter ― 「屠殺する」「大量・残酷に殺す」

slaughter には大きく分けて2つの重要な使い方があります。

1つは、家畜などを食肉のために殺す「屠殺」。

もう1つは、多数の人や動物を残酷に殺すことです。

そのため、kill よりも場面が限定されています。

家畜を食肉のために屠殺する

The animals are raised and slaughtered for food.

訳:その動物たちは食用として育てられ、屠殺されます。

畜産・食品産業では slaughter は専門的にも一般的にも使われます。ここでは必ずしも「残虐に殺す」という感情的意味ではなく、食肉処理という意味です。

slaughterhouse ― 屠殺場

The cattle were taken to a slaughterhouse.

訳:その牛たちは屠殺場へ運ばれました。

slaughterhouse は、家畜を食肉処理する施設を表す一般的な語です。

多数の人が残酷に殺される

Hundreds of civilians were slaughtered during the attack.

訳:その攻撃で何百人もの民間人が虐殺されました。

人について slaughter を使うと、単なる kill よりも多数の人が無抵抗の状態などで残酷に殺されたという強い印象を与えます。

そのため、slaughter は人について使うと非常に重い言葉になります。

slaughter は名詞でも使う

The international community condemned the slaughter of civilians.

訳:国際社会は民間人の虐殺を非難しました。

名詞の slaughter は「屠殺」「虐殺」という意味になります。文脈によって意味が大きく変わる点に注意しましょう。

スポーツでは「圧勝する」

slaughter は口語で、試合などで相手を一方的に打ち負かす意味にも使われます。

We got slaughtered in the second half.

訳:後半はボロ負けでした。

ここでは誰も殺されていません。相手に一方的に負けたことを、誇張して slaughter で表しています。かなりくだけた表現です。

同じ状況で kill・murder・slaughter を比べてみよう

人が死亡したニュースの場合

Three people were killed.

訳:3人が亡くなりました。

死亡したという事実だけを述べています。事故、攻撃、災害など原因はさまざまに考えられます。

Three people were murdered.

訳:3人が殺害されました。

murder を使うと「犯罪として意図的に殺された」という情報が加わります。単なる kill の強調版ではありません。

Dozens of villagers were slaughtered.

訳:何十人もの村人が虐殺されました。

slaughter は、多数の人々が残酷に殺されたという強い意味を伝えます。

この3文を比べると、違いがよく分かります。

kill は「死亡した」という結果。

murder は「犯罪として意図的に殺害された」という性質。

slaughter は「多数を残酷に殺害した」という状況。

動物の場合

The farmer killed the injured animal.

訳:農家の人は負傷した動物を死なせました。

kill は単に動物を死なせたという事実を表します。

The animals were slaughtered for meat.

訳:その動物たちは食肉のために屠殺されました。

食肉処理という目的があるため slaughter が自然です。

一方、通常の英語では動物について murder を使うことは一般的ではありません。感情的・比喩的に使われることはありますが、基本的には人間の犯罪としての殺人を表す語です。

よく使われるコロケーション・定番表現

表現 意味
kill someone 人を死なせる・殺す
be killed in an accident 事故で死亡する
kill instantly 即死させる
kill time 時間をつぶす
kill the engine エンジンを止める
kill the lights 照明を消す
kill off 次々と死なせる・消滅させる
murder someone 人を犯罪として殺害する
murder victim 殺人事件の被害者
murder case 殺人事件
murder investigation 殺人事件の捜査
attempted murder 殺人未遂
get away with murder 好き放題しても罰せられない
slaughter animals 動物を屠殺する
slaughter cattle 牛を屠殺する
slaughterhouse 屠殺場
the slaughter of civilians 民間人の虐殺
get slaughtered スポーツなどでボロ負けする

日本人学習者が間違えやすいポイント

1.kill は必ずしも「殺人」を意味しない

日本語の「殺す」はかなり強い表現なので、kill も常に意図的な殺害を意味すると考えてしまいがちです。

しかし英語の kill はもっと広く使われます。

Five people were killed in the crash.

訳:その事故で5人が死亡しました。

この文は「5人が殺害された」という意味ではありません。事故などで死亡したことを自然に表す典型的な kill の使い方です。

2.murder は kill の強調形ではない

kill → murder → slaughter の順に「殺し方が激しくなる」と覚えるのは正確ではありません。

murder には犯罪として意図的に人を殺すという独自の意味があります。

The storm killed several people.

訳:その嵐で数人が死亡しました。

嵐は人を murder することはできません。murder は犯罪としての人間の行為を前提とするためです。

3.人について slaughter を使うと非常に強い

slaughter は人にも使えますが、「単に殺された」という中立的な表現ではありません。

多くの場合、無抵抗の人々が多数・残酷に殺されるような状況を表します。

普通の一件の殺人事件について、単に強調したいから slaughter を使うという考え方は避けた方がよいでしょう。

4.食肉のための動物には slaughter がよく使われる

The cattle are slaughtered for meat.

訳:その牛たちは食肉用に屠殺されます。

畜産業や食品関連では slaughter は通常の専門用語です。この文脈では、必ずしも感情的な「虐殺」という意味ではありません。

5.kill には日常的な比喩表現が多い

kill を見たからといって、必ず「命を奪う」と訳す必要はありません。

This heat is killing me.

訳:この暑さにはまいったよ。

日常会話では「ものすごくつらい」「耐えられない」という誇張表現として kill が使われます。実際に命に関わっているという意味ではありません。

kill・murder・slaughter の使い分けを再確認

判断するポイント 自然な語 例
人や動物などを死なせる一般的な表現 kill kill an animal
事故で人が死亡する kill be killed in an accident
病気が人を死なせる kill The disease kills thousands.
時間をつぶす kill kill time
人を意図的・不法に殺害する murder murder someone
殺人事件 murder murder case
家畜を食肉のために屠殺する slaughter slaughter cattle
多数の人を残酷に殺害する slaughter slaughter civilians
スポーツで一方的に負ける slaughter get slaughtered

ミニクイズ

kill・murder・slaughter の違いと定番表現を確認してみましょう。

Q1. Three people were in the car accident.

訳:その交通事故で3人が死亡しました。

解説:事故による死亡なので kill が自然です。murder は意図的・不法な殺人を意味するため使えません。

Q2. Police believe the victim was .

訳:警察は、その被害者が殺害されたとみています。

解説:犯罪として人が意図的に殺害されたことを表すので murder が適切です。

Q3. The animals are for meat.

訳:その動物たちは食肉のために屠殺されます。

解説:食肉処理のために家畜を殺す場合は slaughter がよく使われます。

Q4. I’m just trying to time until my train arrives.

訳:電車が来るまで時間をつぶしているだけです。

解説:kill time は「時間をつぶす」という非常によく使われる慣用表現です。

Q5. Police opened a .

訳:警察は殺人事件の捜査を開始しました。

解説:murder investigation は「殺人事件の捜査」というニュースでよく使われるコロケーションです。

Q6. The disease much of the local wildlife.

訳:その病気によって地域の野生動物の多くが死にました。

解説:kill off は「多数を死なせて大きく数を減らす」という意味です。

Q7. Hundreds of civilians were during the attack.

訳:その攻撃で何百人もの民間人が虐殺されました。

解説:多数の人々が残酷に殺された状況なので slaughter が使われています。非常に強い語です。

Q8. He seems to get away with at work.

訳:彼は職場で何をしても許されているようです。

解説:get away with murder は「ひどいことをしても罰せられない」という慣用表現です。実際の殺人を意味しているわけではありません。

Q9. We got 8–1 in yesterday’s game.

訳:昨日の試合では8対1でボロ負けしました。

解説:スポーツなどでは get slaughtered が「一方的にやられる・ボロ負けする」というくだけた比喩表現になります。

まとめ ―「殺す」を何について述べているのかで選ぼう

kill・murder・slaughter は、どれも日本語では「殺す」と訳されることがありますが、英語では注目しているポイントが大きく異なります。

kill = 生きているものを「死なせる」という最も広い表現

murder = 人を意図的・不法に「犯罪として殺害する」

slaughter = 動物を「屠殺する」、または多数を「残酷に殺害する」

迷ったときは、まず「死亡という結果だけを述べているのか」を考えてみましょう。

事故、病気、災害を含め、単に「死なせる・死亡する」という意味なら kill が基本です。

次に、その行為が「人に対する意図的な犯罪としての殺人」なのかを考えます。その場合は murder が適切です。

そして、「家畜を食肉処理する」のか、あるいは「多数の人々を残酷に殺す」という状況なのかを表したい場合は slaughter が使われます。

特に覚えておきたいのは、murder や slaughter は kill の単なる強調形ではないということです。

「どれくらい強い言葉か」ではなく、死亡という結果なのか、犯罪としての殺人なのか、屠殺・虐殺なのかという意味の軸で判断すると、3語を自然に使い分けられるようになります。

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