英語を学んでいると、a、an、the の使い分けで迷うことがよくあります。
日本語には英語の冠詞にそのまま対応する仕組みがないため、
「なぜここでは a が必要なの?」
「どうして急に the になるの?」
「何も付けない場合との違いは?」
と疑問に感じるのは自然なことです。
冠詞を理解するうえで大切なのは、単に「a は1つ、the はその」と暗記することではありません。
話し手と聞き手が、その名詞をどのように見ているのかを考えることが重要です。
今回は、不定冠詞 a・an と定冠詞 the、さらに冠詞を付けない無冠詞について、英語学習者が実際に使える形で整理してみましょう。
- まずは a・an・the の違いをざっくり確認
- a・an ―「どれか1つ」を表す不定冠詞
- a と an の違いは「つづり」ではなく「音」
- a・an は数えられる単数名詞に使う
- 職業を言うときにも a・an が必要
- the ―「どれのことかわかる」定冠詞
- 最初は a、2回目は the
- 最初から the を使えることもある
- 世界に1つと考えられるものにも the
- 後ろの説明で「どれか」が決まる場合にも the
- 最上級や序数にも the がよく使われる
- the は単数だけでなく複数・数えない名詞にも使える
- 冠詞を付けない「無冠詞」も重要
- I like music. と I like the music. の違い
- Dogs と the dogs の違い
- go to school と go to the school の違い
- 固有名詞には基本的に冠詞を付けない
- 「a か the か」で迷ったときの考え方
- 日本人学習者が間違えやすいポイント
- ミニクイズ
- まとめ
まずは a・an・the の違いをざっくり確認
| 形 | 基本的な考え方 | 例 |
|---|---|---|
| a / an | どれか1つ・1人だが、まだ特定されていない | a book / an apple |
| the | 話し手と聞き手が「どれか」を特定できる | the book / the door |
| 無冠詞 | もの全般・概念全般について話す | Books are useful. / I like coffee. |
まずは次の3つを基本イメージとして持っておきましょう。
a / an = ある1つのもの
the = どれのことかわかるもの
無冠詞 = ものや概念を一般的に述べる
a・an ―「どれか1つ」を表す不定冠詞
a と an は、不定冠詞と呼ばれます。
基本的には、数えられる名詞の単数形について、「どれとはまだ特定していない1つ」を表します。
I bought a book yesterday.
訳:私は昨日、本を1冊買いました。
どの本なのかはまだ相手に知られていません。「ある1冊の本」という意味なので a book になります。
She saw a dog in the park.
訳:彼女は公園で犬を1匹見ました。
どの犬なのかを特定せず、「ある犬」を初めて話題に出しているので a dog が自然です。
a と an の違いは「つづり」ではなく「音」
a と an の意味は同じです。
違うのは、後ろに続く音です。
子音の音で始まる → a
母音の音で始まる → an
a book
訳:1冊の本
book は子音の音で始まるので a を使います。
an apple
訳:1個のリンゴ
apple は母音の音で始まるので an を使います。
スペルではなく発音で決まる
ここは特に重要です。
an hour
訳:1時間
hour は h で始まっていますが、h を発音せず、最初の音は母音です。そのため an hour となります。
a university
訳:1つの大学
university は u で始まっていますが、最初の音は「ユ」に近い子音の音です。そのため a university となります。
an MBA student
訳:MBA課程の学生
M は「エム」と発音し、母音の音から始まるため an MBA student となります。
つまり、
a / an は最初の文字を見るのではなく、最初の音を聞いて決める
ということです。
a・an は数えられる単数名詞に使う
a / an を使えるのは、基本的に数えられる名詞の単数形です。
I need a chair.
訳:私は椅子が1脚必要です。
chair は1脚、2脚と数えられる名詞なので a chair と言えます。
一方、複数形には a / an を付けません。
a books のようには言いません。
また、基本的に数えない名詞にも a / an は付けません。
I need some information.
訳:私は情報が必要です。
information は通常、数えない名詞なので an information とは言いません。
職業を言うときにも a・an が必要
日本人学習者が冠詞を落としやすい代表例が、職業です。
I’m a teacher.
訳:私は教師です。
teacher は数えられる単数名詞なので、職業を表す場合にも a が必要です。
She is an engineer.
訳:彼女はエンジニアです。
engineer は母音の音で始まるため an engineer になります。
I’m teacher. のように冠詞を落とさないよう注意しましょう。
the ―「どれのことかわかる」定冠詞
the は定冠詞と呼ばれます。
もっとも大切な考え方は、
話し手と聞き手の間で「どれのことか特定できる」
ということです。
Please close the door.
訳:ドアを閉めてください。
その場にいる人たちが「どのドアのことか」わかっているので the door になります。
「the = その」と機械的に覚えるより、
the = 相手もどれかわかる
と考えるほうが応用しやすくなります。
最初は a、2回目は the
冠詞の説明でよく使われるのが、「初めて出てきた名詞には a、2回目から the」というルールです。
これは非常に役立つ考え方ですが、本当の理由は「2回目だから」ではありません。
一度話題に出たことで、相手がどれのことかわかるようになったからです。
I saw a dog in the park. The dog was very friendly.
訳:私は公園で犬を1匹見ました。その犬はとても人懐っこかったです。
最初の a dog では、まだどの犬かわかりません。一度紹介されたあとなら、聞き手もどの犬のことかわかるため the dog になります。
つまり、
a dog = まだどの犬かわからない
the dog = どの犬かわかっている
という違いです。
最初から the を使えることもある
「最初は必ず a」と考えてしまうと、逆に間違えることがあります。
初めて話題に出す名詞でも、聞き手がどれのことかわかるなら the を使えます。
Can you open the window?
訳:窓を開けてもらえますか。
会話でその窓が初登場でも、その場にある窓を指していて相手が特定できるなら the window になります。
したがって、重要なのは、
初登場か2回目かではなく、相手がどれのことかわかるか
です。
世界に1つと考えられるものにも the
その状況で1つしかないと考えられるものにも the が使われます。
The sun is shining.
訳:太陽が輝いています。
通常、私たちが話している「太陽」はどれか特定できるため the sun になります。
Look at the moon.
訳:月を見てください。
ここでも、どの月を指しているのか共有できているため the moon となります。
後ろの説明で「どれか」が決まる場合にも the
名詞のあとに説明が続き、その説明によって対象が特定される場合にも the がよく使われます。
The book on the desk is mine.
訳:机の上にある本は私のものです。
on the desk によって「どの本なのか」が特定されるため the book になります。
The man wearing a blue jacket is my father.
訳:青いジャケットを着ている男性は私の父です。
「青いジャケットを着ている」という説明によって、その男性を特定しています。
最上級や序数にも the がよく使われる
「いちばん〜」「最初の〜」のように対象が1つに絞られる表現では、the がよく使われます。
She is the best student in the class.
訳:彼女はクラスでいちばん優秀な生徒です。
「クラスでいちばん」という条件によって1人に特定されるため the best student となります。
This is the first time I’ve been here.
訳:ここに来たのは今回が初めてです。
first のような序数にも the がよく使われます。
the は単数だけでなく複数・数えない名詞にも使える
a / an は数えられる単数名詞にしか使えませんが、the はもっと幅広く使えます。
The books on this shelf are mine.
訳:この棚にある本は私のものです。
books は複数形ですが、どの本か特定されているので the を使えます。
The water in this bottle is cold.
訳:このボトルの水は冷たいです。
water は数えない名詞ですが、「このボトルの中の水」と特定されているため the water となります。
冠詞を付けない「無冠詞」も重要
英語の冠詞を理解するには、a・an・the を付けない場合も知っておく必要があります。
代表的なのは、複数名詞や数えない名詞について、もの全般を一般的に話す場合です。
I like dogs.
訳:私は犬が好きです。
特定の犬ではなく「犬という動物全般」が好きなので、the dogs ではなく単に dogs とします。
I drink coffee every morning.
訳:私は毎朝コーヒーを飲みます。
特定のコーヒーではなく、飲み物としてのコーヒーを一般的に述べているので冠詞を付けません。
I like music. と I like the music. の違い
冠詞の有無によって意味が変わることがあります。
I like music.
訳:私は音楽が好きです。
音楽全般について話しているので無冠詞です。
I like the music in this movie.
訳:私はこの映画の音楽が好きです。
「この映画で使われている音楽」と特定されているので the music になります。
この違いは非常に重要です。
music = 音楽全般
the music = 特定の音楽
ということになります。
Dogs と the dogs の違い
複数名詞でも同じ考え方が使えます。
Dogs are friendly animals.
訳:犬は人懐っこい動物です。
犬という種類全般について述べているので冠詞を付けません。
The dogs in the garden are mine.
訳:庭にいる犬たちは私の犬です。
「庭にいる犬たち」と特定されているので the dogs となります。
go to school と go to the school の違い
冠詞の有無で意味が変わる代表的な表現があります。
My son goes to school every day.
訳:息子は毎日学校へ通っています。
ここでは「学校という場所に通って教育を受ける」という本来の目的を表しているため、通常 school は無冠詞になります。
I went to the school to meet his teacher.
訳:私は先生に会うためにその学校へ行きました。
ここでは「学校という建物・場所」を指しているので the school が使われています。
つまり、
go to school = 学生として学校へ行く
go to the school = 特定の学校という場所へ行く
という違いがあります。
固有名詞には基本的に冠詞を付けない
人名や多くの国名・都市名などの固有名詞には、通常、冠詞を付けません。
She lives in Japan.
訳:彼女は日本に住んでいます。
Japan は固有名詞なので、通常 the Japan とは言いません。
I’ve been to Tokyo several times.
訳:私は東京に何度か行ったことがあります。
都市名にも通常、冠詞を付けません。
ただし the が付く固有名詞もある
すべての固有名詞が無冠詞というわけではありません。
たとえば、次のような名前には the が使われます。
the United States
the United Kingdom
the Netherlands
the Pacific Ocean
the Nile
the Alps
国名・海・川・山脈などにはそれぞれ傾向がありますが、まずは「固有名詞は基本的に無冠詞。ただし the を伴う名前もある」と理解しておけばよいでしょう。
「a か the か」で迷ったときの考え方
冠詞を選ぶときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- その名詞は数えられる単数名詞か?
- 聞き手は「どれのことか」特定できるか?
- 特定できるなら the
- 特定できない数えられる単数名詞なら a / an
- 複数名詞や数えない名詞を一般的に述べるなら無冠詞
たとえば、
I need a pen.
訳:ペンが1本必要です。
どのペンでもよく、特定されていないので a pen です。
I need the pen on your desk.
訳:あなたの机の上にあるペンが必要です。
「あなたの机の上のペン」と特定されているので the pen です。
日本人学習者が間違えやすいポイント
1. 数えられる単数名詞を冠詞なしで使う
× I bought book.
○ I bought a book.
book のような数えられる単数名詞は、通常そのまま単独では使えません。
2. 一般論なのに the を付ける
× I like the coffee.(コーヒー全般という意味なら不自然)
○ I like coffee.
一方、目の前の特定のコーヒーなら、
I like the coffee you made.
訳:あなたが入れてくれたコーヒーが気に入りました。
のように the を使えます。
3. a と an を文字だけで決める
an hour、a university のように、発音で決めることを忘れないようにしましょう。
4. the をいつも「その」と訳そうとする
the は日本語に必ず「その」と訳されるわけではありません。
The sun is very bright today.
訳:今日は太陽がとてもまぶしいです。
日本語では「その太陽」とは普通言いませんが、英語では対象が特定されているため the sun となります。
冠詞は日本語訳ではなく、英語の中でその名詞がどのように特定されているかを考えることが大切です。
ミニクイズ
次の( )に入るもっとも自然なものを、a・an・the・冠詞なしから考えてみましょう。
Q1. I saw dog in the park.
訳:私は公園で犬を1匹見ました。
解説:初めて話題に出す、まだ特定されていない1匹の犬なので a を使います。
Q2. I saw a dog in the park. dog was very friendly.
訳:私は公園で犬を1匹見ました。その犬はとても人懐っこかったです。
解説:一度話題に出たことで、どの犬なのか聞き手も特定できるため the を使います。
Q3. She is engineer.
訳:彼女はエンジニアです。
解説:engineer は数えられる単数名詞で、母音の音から始まるため an が必要です。
Q4. He waited for hour.
訳:彼は1時間待ちました。
解説:hour の h は発音されず、母音の音から始まるため an hour となります。
Q5. She studies at university in London.
訳:彼女はロンドンのある大学で勉強しています。
解説:university は母音字 u で始まりますが、最初の音は子音の「ユ」に近いため a university となります。
Q6. Please close door.
訳:ドアを閉めてください。
解説:その場の状況から、どのドアなのか聞き手が特定できるので the を使います。
Q7. I like coffee.
訳:私はコーヒーが好きです。
解説:特定のコーヒーではなく、コーヒーという飲み物全般について話しているので冠詞を付けません。
Q8. Dogs are popular pets.
訳:犬は人気のあるペットです。
解説:特定の犬ではなく犬という動物全般について述べているので、複数形 Dogs を無冠詞で使います。
Q9. This is best restaurant in town.
訳:ここは町でいちばんよいレストランです。
解説:best は最上級で、対象が1つに特定されるため通常 the best とします。
Q10. My daughter goes to school every weekday.
訳:娘は平日は毎日学校へ通っています。
解説:学生として学校へ通い、教育を受けるという本来の目的を表しているため、通常 school は無冠詞になります。
まとめ
英語の冠詞 a・an・the を使い分けるときは、日本語訳だけで考えるのではなく、その名詞を聞き手が特定できるかを考えることが大切です。
- a / an = 数えられる単数名詞について、まだ特定されていない「ある1つ」を表す
- the = 話し手と聞き手が「どれのことか」特定できるものを表す
- 無冠詞 = 複数名詞や数えない名詞について、もの・概念全般を表す場合によく使う
a / an = どれか1つ
the = どれのことかわかる
無冠詞 = 全般について話す
たとえば、
I bought a book.
= ある1冊の本を買った
The book was expensive.
= 先ほど話題にした、その本は高かった
Books are useful.
= 本というものは役に立つ
という違いがあります。
そして、a と an の違いはつづりではなく音です。
an hour なのに a university となるのは、このためです。
冠詞は細かい例外をすべて暗記しようとすると難しく感じます。まずは、「相手はどれのことかわかるだろうか?」という視点を身につけることから始めましょう。
この感覚が身につくと、a・an・the・無冠詞 の選択が、単なる暗記ではなく意味の違いとして理解できるようになります。