日本語の「傷つける」は、人の体を傷つけるときにも、物を壊すときにも、健康や環境に悪影響を与えるときにも使えます。
ところが英語では、「何を、どのような意味で傷つけるのか」によって動詞を使い分けます。
代表的なのが damage、harm、injure です。
3語とも日本語では「傷つける」「損なう」「害する」などと訳せますが、中心となる視点はかなり異なります。
damage は、物・機能・価値・評判などを損なうこと、harm は、人・健康・環境などに悪影響や害を与えること、injure は、主に人や動物の体にけがを負わせることを表します。
今回は、現代英語でよく使われるコロケーションや定番表現も含めて、damage・harm・injure の違いを整理してみましょう。
- まずは3語の違いをざっくり確認
- damage ― 物・機能・価値などを「損なう」
- damage は人そのものより「体の組織・機能」と相性がよい
- damage someone's reputation ―「人の評判を傷つける」
- do damage to ... ―「〜に損害を与える」
- damage は通常、名詞では数えない
- harm ― 人・健康・環境などに「害を与える」
- harm は身体的・精神的・社会的な害まで幅広い
- do harm to ... ―「〜に害を与える」
- do more harm than good ―「かえって害になる」
- no harm done ―「大事には至らなかった」
- It can't hurt. / It won't hurt. と harm の関係
- injure ― 人や動物に「けがをさせる」
- injured はニュースでも非常によく使われる
- injury ―「けが・負傷」
- damage と injure の違い
- harm と injure の違い
- damage と harm の違い
- 同じ事故で3語を比べてみよう
- 「心を傷つける」は injure ではなく hurt が基本
- 「傷つける」を選ぶときの判断基準
- よく使う表現をまとめて覚えよう
- ミニクイズ
- 使い分けをもう一度整理
- まとめ
まずは3語の違いをざっくり確認
| 単語 | 中心となる意味 | 注目しているもの |
|---|---|---|
| damage | 壊す・損なう・価値や機能を低下させる | 物・機能・評判などが受けた損傷 |
| harm | 害を与える・悪影響を与える | 人・健康・環境などへの悪い影響 |
| injure | けがをさせる | 人・動物の身体的な負傷 |
まずは次のように覚えておくとよいでしょう。
damage = 壊して機能・価値を損なう
harm = 悪い影響・害を与える
injure = 体にけがをさせる
damage ― 物・機能・価値などを「損なう」
damage は、何かを壊したり劣化させたりして、以前より状態・機能・価値を悪くすることを表します。
特に、建物、車、機械、データ、髪、皮膚、評判などとの相性がよい語です。
The storm damaged several houses.
訳:嵐で数軒の家が損傷しました。
家という物理的な物が壊れ、状態が悪くなったので damage が自然です。
The accident badly damaged the car.
訳:その事故で車はひどく損傷しました。
車の形や機能が損なわれたことに注目しています。
Too much heat can damage your hair.
訳:過度の熱は髪を傷めることがあります。
髪の状態や質を悪化させるという意味なので damage がよく使われます。
damage は人そのものより「体の組織・機能」と相性がよい
damage は、人間の体についても使えます。
ただし、通常は「人をけがさせる」というより、臓器・皮膚・神経・組織などの機能や状態を損なうことを表します。
Smoking can damage your lungs.
訳:喫煙は肺を傷つけることがあります。
肺の組織や機能を損なうという意味なので damage が自然です。
UV rays can damage the skin.
訳:紫外線は皮膚を傷つけることがあります。
皮膚の状態を悪化させたり細胞を損傷したりすることを表しています。
一方、交通事故で「人がけがをした」という場合に、通常 The accident damaged him. とは言いません。
その場合は injure が自然です。
damage someone’s reputation ―「人の評判を傷つける」
damage は、目に見える物だけでなく、評判・信用・関係・経済などを損なう場合にもよく使われます。
The scandal damaged his reputation.
訳:そのスキャンダルは彼の評判を傷つけました。
評判の価値や信用が低下したという意味なので damage が自然です。
The mistake damaged the company’s credibility.
訳:そのミスは会社の信用を損ないました。
damage credibility は「信用を損なう」というビジネスやニュースでもよく使われる組み合わせです。
do damage to … ―「〜に損害を与える」
damage は名詞としても非常によく使われます。
The storm did serious damage to the roof.
訳:嵐は屋根に深刻な損害を与えました。
do damage to … で「〜に損害を与える」という意味です。
よく使われる組み合わせには、
cause damage = 損害を引き起こす
do damage to … = 〜に損害を与える
suffer damage = 損害を受ける
serious damage = 深刻な損害
irreparable damage = 修復不能な損害
などがあります。
damage は通常、名詞では数えない
「損害」という意味の damage は、通常は数えない名詞です。
× many damages
○ a lot of damage
The fire caused a lot of damage.
訳:その火災は大きな損害をもたらしました。
一般的な「損害」の意味では damage を不可算名詞として扱います。
ただし、法律用語の damages は別で、「損害賠償金」という意味になります。
The court awarded her damages.
訳:裁判所は彼女に損害賠償金を認めました。
複数形の damages は、法律上の「損害賠償金」という特別な意味です。
harm ― 人・健康・環境などに「害を与える」
harm は、人や物に悪い影響を与えることを幅広く表します。
damage が「損傷・機能低下」という結果を意識するのに対し、harm は相手にとって有害であることに重点があります。
Smoking harms your health.
訳:喫煙は健康を害します。
健康に悪い影響を与えるので harm が自然です。
This chemical can harm the environment.
訳:この化学物質は環境に害を与える可能性があります。
環境全体に悪影響を及ぼすことを表しています。
I would never do anything to harm you.
訳:あなたを傷つけるようなことは決してしません。
身体的な害だけでなく、より広い意味で相手に悪影響を与えることを表せます。
harm は身体的・精神的・社会的な害まで幅広い
harm の特徴は、「害」の範囲が広いことです。
健康、環境、子どもの発達、社会、経済など、目に見えない悪影響についても自然に使えます。
The policy could harm small businesses.
訳:その政策は中小企業に悪影響を与える可能性があります。
企業を物理的に壊すのではなく、経営などに悪い影響を与えるという意味です。
Constant criticism can harm a child’s confidence.
訳:絶え間ない批判は子どもの自信を傷つけることがあります。
心理的・精神的な悪影響なので harm がよく合います。
do harm to … ―「〜に害を与える」
harm も名詞としてよく使われます。
Too much sun can do harm to your skin.
訳:日光を浴びすぎると肌に害を与えることがあります。
do harm to … は「〜に害を与える」という定番表現です。
ただし現代英語では、より簡潔に、
Too much sun can harm your skin.
と言うことも非常に自然です。
do more harm than good ―「かえって害になる」
harm を使った非常に実用的な表現が、do more harm than good です。
Trying to fix it yourself may do more harm than good.
訳:自分で直そうとすると、かえって悪化させるかもしれません。
直訳すると「良いことより害を多く与える」で、「良かれと思ってしても、かえって悪い結果になる」という意味です。
no harm done ―「大事には至らなかった」
No harm done. は、日常会話で使える便利な表現です。
“Sorry, I almost knocked over your coffee.”
“No harm done.”
訳:「ごめん、コーヒーを倒しそうになった」「大丈夫、何ともなかったよ」
実際の被害や害はなかったので「問題ない」「大事には至っていない」という意味になります。
It can’t hurt. / It won’t hurt. と harm の関係
日常会話の「やっても害はない」「やって損はない」では、harm より hurt を使う表現もよくあります。
It can’t hurt to ask.
訳:聞いてみても損はないでしょう。
文字どおりの「傷つく」ではなく、「悪い結果にはならない」という意味です。日常英語では非常によく使われます。
injure ― 人や動物に「けがをさせる」
injure は、人や動物の身体にけがを負わせることを表します。
事故、スポーツ、転倒、災害など、身体的な負傷について特によく使われます。
Three people were injured in the accident.
訳:その事故で3人がけがをしました。
事故による身体的な負傷なので injure が自然です。
He injured his knee while playing soccer.
訳:彼はサッカーをしているときに膝をけがしました。
膝という身体の一部をけがしたため injure を使います。
She injured her back lifting a heavy box.
訳:彼女は重い箱を持ち上げて腰を痛めました。
身体の部位を負傷したことを表しています。
injured はニュースでも非常によく使われる
事故や災害のニュースでは、be injured が頻繁に使われます。
Several passengers were seriously injured.
訳:数人の乗客が重傷を負いました。
seriously injured は「重傷を負った」というニュースで非常によく使われる表現です。
よく使われる組み合わせには、
be injured in an accident = 事故でけがをする
seriously injured = 重傷を負った
badly injured = ひどくけがをした
injure one’s knee = 膝をけがする
injure oneself = けがをする
などがあります。
injury ―「けが・負傷」
injure の名詞は injury です。
He suffered a serious knee injury.
訳:彼は膝に重傷を負いました。
suffer an injury は「けがを負う」という自然な表現です。
She returned to work after recovering from her injury.
訳:彼女はけがから回復したあと仕事に復帰しました。
recover from an injury は「けがから回復する」という頻出表現です。
damage と injure の違い
この2語は「物」と「人」を意識すると、かなり使い分けやすくなります。
The accident damaged the car.
訳:その事故で車が損傷しました。
車という物の状態・機能が損なわれたため damage です。
The accident injured the driver.
訳:その事故で運転手がけがをしました。
人の身体が負傷したので injure です。
つまり、事故について、
damage the car = 車を損傷させる
injure the driver = 運転手にけがをさせる
という自然な役割分担があります。
harm と injure の違い
harm は injure より意味の範囲が広い語です。
The chemical may harm workers’ health.
訳:その化学物質は作業員の健康を害する可能性があります。
具体的なけがに限定せず、健康全般への悪影響を表しているので harm が自然です。
The explosion injured two workers.
訳:その爆発で作業員2人がけがをしました。
具体的な身体的負傷が生じたため injure を使います。
つまり、
harm = 広く悪い影響を与える
injure = 身体に具体的なけがを負わせる
という違いです。
damage と harm の違い
damage と harm は意味が重なることも多くあります。
ただし、中心となる視点が異なります。
Air pollution damages buildings.
訳:大気汚染は建物を傷めます。
建物そのものの材質・状態が劣化することに注目しているので damage が自然です。
Air pollution harms human health.
訳:大気汚染は人間の健康を害します。
健康に悪影響を与えることに注目しているので harm が自然です。
大まかにいえば、
damage → 何かの状態・機能・価値を悪くする
harm → 誰か・何かに悪影響を与える
と考えるとよいでしょう。
同じ事故で3語を比べてみよう
交通事故を例にすると、3語の違いがよくわかります。
The crash damaged the car.
訳:衝突で車が損傷しました。
車の状態・機能が損なわれたので damage です。
The crash injured the driver.
訳:衝突で運転手がけがをしました。
運転手の身体にけがが生じたので injure です。
The crash harmed the company’s reputation.
訳:その事故は会社の評判に悪影響を与えました。
会社の評判に悪い影響が及んだことを表しています。ここでは damage も使えますが、harm は「悪影響を与えた」という点に焦点があります。
このように、同じ出来事でも、何に注目するかによって英単語が変わります。
「心を傷つける」は injure ではなく hurt が基本
日本語の「傷つける」で特に注意したいのが、感情についてです。
「人の気持ちを傷つける」は、現代の日常英語では通常 hurt を使います。
I didn’t mean to hurt your feelings.
訳:あなたの気持ちを傷つけるつもりはありませんでした。
hurt someone’s feelings は「人の気持ちを傷つける」という定番表現です。
injure someone’s feelings のような表現は古風・形式的に見られることがありますが、現代の日常英語なら hurt someone’s feelings が基本です。
したがって、日本語の「傷つける」をすべて damage・harm・injure のどれかにする必要はありません。
「傷つける」を選ぶときの判断基準
迷ったときは、「何がどう悪くなったのか」を考えてみましょう。
物・機能・価値・評判が損なわれた → damage
健康・環境・人などに悪い影響が及んだ → harm
人・動物の身体にけがが生じた → injure
感情・気持ちを傷つけた → hurt
この4つの視点があると、日本語の「傷つける」をかなり自然に英語へ置き換えられます。
よく使う表現をまとめて覚えよう
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| damage a car | 車を損傷させる |
| damage someone’s reputation | 人の評判を傷つける |
| damage the skin | 皮膚を傷める |
| do damage to … | 〜に損害を与える |
| cause serious damage | 深刻な損害をもたらす |
| harm your health | 健康を害する |
| harm the environment | 環境に害を与える |
| do harm to … | 〜に害を与える |
| do more harm than good | かえって害になる |
| no harm done | 被害はなかった・大丈夫 |
| injure one’s knee | 膝をけがする |
| be injured in an accident | 事故でけがをする |
| seriously injured | 重傷を負った |
| suffer an injury | けがを負う |
| recover from an injury | けがから回復する |
| hurt someone’s feelings | 人の気持ちを傷つける |
ミニクイズ
次の( )に入るもっとも自然な語を、damage・harm・injure を中心に考えてみましょう。必要に応じて形を変えてください。
Q1. The storm several houses.
訳:嵐で数軒の家が損傷しました。
解説:建物の状態が物理的に損なわれたので damage が自然です。
Q2. Smoking can your health.
訳:喫煙は健康を害することがあります。
解説:健康に広く悪影響を与えることを表すので harm が自然です。
Q3. Two passengers were in the accident.
訳:その事故で乗客2人がけがをしました。
解説:人の身体に具体的なけがが生じたので injure が自然です。
Q4. The scandal seriously the company’s reputation.
訳:そのスキャンダルは会社の評判を大きく傷つけました。
解説:評判・信用の価値を損なう場合、damage someone’s reputation がよく使われます。
Q5. He his knee while running.
訳:彼は走っているときに膝をけがしました。
解説:身体の一部にけがをしたので injure を使います。
Q6. The new rule may small businesses.
訳:その新しい規則は中小企業に悪影響を与える可能性があります。
解説:企業に広い意味で悪影響を与えるので harm が自然です。
Q7. Trying to repair it yourself could do more than good.
訳:自分で修理しようとすると、かえって悪化させるかもしれません。
解説:do more harm than good は「良くするどころか、かえって害になる」という定番表現です。
Q8. The fire caused extensive to the building.
訳:その火災は建物に大きな損害を与えました。
解説:cause damage to … は「〜に損害をもたらす」という頻出表現です。
Q9. Several players were seriously .
訳:数人の選手が重傷を負いました。
解説:seriously injured は「重傷を負った」というニュースでもよく使われる組み合わせです。
Q10. I didn’t mean to your feelings.
訳:あなたの気持ちを傷つけるつもりはありませんでした。
解説:感情を傷つける場合、現代の日常英語では hurt someone’s feelings が自然です。damage・harm・injure のどれかに無理に置き換えないことも重要な使い分けです。
使い分けをもう一度整理
| こんなとき | 使いやすい語 | 例 |
|---|---|---|
| 車・建物などを損傷させる | damage | damage a car |
| 評判・信用を損なう | damage | damage a reputation |
| 臓器・皮膚などを傷める | damage | damage the lungs |
| 健康に害を与える | harm | harm your health |
| 環境に悪影響を与える | harm | harm the environment |
| 人の身体にけがをさせる | injure | injure a passenger |
| 体の一部をけがする | injure | injure your knee |
| 人の気持ちを傷つける | hurt | hurt someone’s feelings |
まとめ
「傷つける」を表す damage・harm・injure は、単純な強さの違いではありません。
何が、どのような意味で悪くなったのかによって使い分けます。
- damage = 物・組織・機能・価値・評判などを損なう
- harm = 人・健康・環境などに広く悪い影響や害を与える
- injure = 人や動物の身体に具体的なけがを負わせる
damage = 状態・機能・価値を損なう
harm = 悪い影響を与える
injure = 身体を負傷させる
たとえば交通事故なら、
The accident damaged the car.
= 車が損傷した
The accident injured the driver.
= 運転手がけがをした
となります。
また、大気汚染についてなら、
Air pollution damages buildings.
= 建物そのものを劣化させる
Air pollution harms human health.
= 人の健康に悪影響を与える
という違いがあります。
そして、日本語の「傷つける」が感情について使われている場合には、hurt someone’s feelings のように hurt が自然なことも忘れないようにしましょう。
日本語を見て機械的に英単語を当てはめるのではなく、
「壊して価値や機能を損なったのか」「害を与えたのか」「身体にけがをさせたのか」
を判断することが、damage・harm・injure を自然に使い分けるポイントです。